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循環器の病気|森医院|岐阜市の内科

当院で実際にあった循環器の症例をご紹介します。
ご紹介する症例につきましては、個人の体質や状況によって現れる症状が違うことがあります。
気になることなどございましたら、お気軽にお問い合わせください。

循環器の病気の症例紹介

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慢性心不全にトルバプタンの導入

エコノミークラス症候群

原発性アルドステロン症

難治性高血圧(なんちせいこうけつあつ)

大動脈弁狭窄症(だいどうみゃくべんきょうさくしょう)

徐脈頻脈症候群(じょみゃくひんみゃくしょうこうぐん)

労作性狭心症(ろうさせいきょうしんしょう)と
冠攣縮性狭心症(かんれんしゅくせいきょうしんしょう)の合併例

労作性狭心症(ろうさせいきょうしんしょう)

頚動脈狭窄症(けいどうみゃくきょうさくしょう)

冠攣縮性狭心症(かんれんしゅくせいきょうしんしょう)

末梢動脈疾患(peripheral arterial disease PAD)


慢性心不全にトルバプタンの導入

80歳 男性
慢性心房細動と大動脈弁閉鎖不全症による慢性心不全
これまでに2回、慢性心不全の急性増悪を起こして入院しています。
心不全の治療として、アンギオテンシンⅡ阻害薬のテルミサルタン40mg、β遮断薬のビソプロロール2.5mg、利尿薬はアゾセミド60mgとスピロノラクトン25mgを投与していました。
しばらく安定していたのですが、夏期になり脱水のため腎機能をあらわすクレアチニンの値が0.87mg/dLから1.30mg/dLへ悪化したため、アゾセミドを30mgに減量したところ、顔面の浮腫が出ました。アゾセミドを減量すると心不全が増悪し、継続すると腎機能障害が進行するというジレンマに陥ったため、トルバプタン導入の適応と考えて、岐阜市民病院循環器内科へ依頼しました。
トルバプタンは、尿濃縮に関わる脳下垂体から分泌される抗利尿ホルモンの働きを抑えることで、腎臓から水の排泄量を増やす作用があります。従来の利尿薬に比して、腎機能を増悪させにくく、また、NaやKといった体内の電解質バランスを崩しにくいのが特徴です。しかし、入院下での導入が義務付けられています。
導入の指標としては、
・心不全の基本的治療(アンギオテンシン変換酵素阻害薬もしくは、アンギオテンシンⅡ阻害薬、β遮断薬、利尿薬の投与)を行っているが、アゾセミドを30mg以上使っている。
・心不全の基本治療を行っているが、クレアチニンが1.3 mg/dL以上の腎機能障害がみられる。
があり、今回はどちらにも該当しました。
サムスカが導入されて退院後は、浮腫もなくなり、腎機能もクレアチニン1.1 mg/dLと少し改善しています。
高齢化とともに、慢性心不全の患者さんは非常に増えており、心不全パンデミックが来ると言われます。高齢者では、心機能だけでなく、腎機能も加齢による障害を来しているため、今回のように利尿薬を増やせば腎機能が悪化し、減らせば心機能が悪化するというジレンマに陥りやすいのです。また、近年の夏期における異常高温は、利尿薬が投与されている患者さんにおいて、脱水症が非常に起こりやすく、これも腎機能悪化の原因の一つとなっています。

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エコノミークラス症候群

75歳女性
高血圧症で通院中
4日前の昼から、突然、体動時の息切れと動悸が起きて、治まらないとのことで来院されました。
血圧は180/90mmHgで、脈拍数は105回/分、そして酸素飽和度は90%と低下していました。発熱はありません。
すぐに胸部レントゲン写真を撮影しましたが、肺炎や自然気胸はありませんでした。心電図も記録しましたが、心筋梗塞の所見もみられません。
そこで肺動脈血栓塞栓症を疑い、総合病院の循環器内科へ紹介させていただきました。
後日同院から報告があり、緊急で行ったCT検査で、ほとんどすべての両側肺動脈末梢に血栓がみられ、肺動脈血栓塞栓症と診断されたとのことでした。
また、右下肢が腫脹しており、右下肢深部静脈血栓症も確認されたとのことでした。
この方は、バス旅行を事前にされており、長時間座位と脱水により、右下肢に深部静脈血栓症を生じ、この血栓が剥がれて血流にのって肺動脈へ運ばれて、肺動脈血栓塞栓症を起こしたものと考えられました。
飛行機のエコノミークラスのように、長時間狭いところで座位を強いられている時に生じやすいため、このような下肢深部静脈血栓症による肺動脈血栓塞栓症を、エコノミークラス症候群といいます。
動脈が閉塞すると、通常は梗塞になるのですが、肺は気管支動脈からも血液が供給されているので、肺梗塞になるのは10%程度といわれています。
発症早期の死亡率は10~30%なので、重大な疾患です。
治療は、抗凝固剤の投与を行い、これ以上の血栓形成を抑制して、自然に血栓が溶けるのを待ちます。重症例では手術的に血栓を取り除くことも行われます。
長時間座位を強いられる場合には、時々足を動かして血栓形成を予防することが重要です。また、トイレに行くのが嫌だからといって、飲水を制限するのも血栓形成を促進させるので、注意が必要です。

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原発性アルドステロン症

53歳女性
2年前から健診で血圧高値を指摘されていました。最近、血圧自己測定をおこなっていると、145-175/85-95mmHgと高いことから、心配になり来院されました。
来院時血圧172/80mmHgで、左右差はありません。
比較的年齢が若いので、ホルモン異常による二次性高血圧の可能性を考えて、採血を行いました。
レニン活性0.3ng/ml、アルドステロン154.9pg/ml、アルドステロン/レニン活性値は516でした。
原発性アルドステロン症は、ホルモン分泌臓器である、副腎からアルドステロンが異常分泌される疾患で、アルドステロンによる昇圧作用のために高血圧となります。
原因は、副腎腫瘍と過形成で、高血圧患者の10%はこの原発性アルドステロン症であるといわれるほど、頻度が高い疾患です。
採血で、レニン活性が1.0ng/ml>で、アルドステロン/レニン活性が>200だと疑いがあり、精密精査を必要とします。
精密精査では、カプトリル負荷試験といって、カプトプリルという薬剤を服用して60分後の採血で、アルドステロン/レニン活性が>200だと診断が確定します。
また、腫瘍か過形成かを鑑別するために、CTなどの画像診断が必要です。
この患者さんは、総合病院の内分泌内科へ紹介し、カプトリル負荷試験でアルドステロン/レニン活性が375でした。
CTでは副腎に腫瘍は見られなかったため、過形成によるものと考えました。
治療は抗アルドステロン薬である、セララ®を使いますが、この患者さんはセララ®で血圧コントロールができたので、これ以上の検索は行わずに内服治療で経過を診ることになりました。
腫瘍の場合は手術を考慮することになります。

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難治性高血圧(なんちせいこうけつあつ)

50歳 女性
15年前から高血圧を指摘されて近医で降圧薬を処方されているが、170/110mmHg程度を推移して全く下がらないとのことで当院を受診されました。
身長150cm、体重70kg、BMI 31 血圧 170/122mmHg
二次性高血圧の検索がされていなかったので、念のためにホルモンなどの検査を行いましたが、異常はみられませんでした。
降圧薬はプレミネント配合錠LD®とアーチスト錠10mg®としました。
肥満のために降圧薬の効果が減弱していると考えて、糖質制限ダイエットと歩行運動を指導しました。
  1ヵ月後    体重 66kg (-4kg)  血圧 134/104 mmHg
  2ヵ月後           64kg (-6kg)         128/86
  4ヵ月後           62kg (-8kg)         128/82
以後も血圧は安定しています。
体重のコントロールは血圧治療においても非常に重要で、食事・運動療法の大切さをあらためて感じました。

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大動脈弁狭窄症(だいどうみゃくべんきょうさくしょう)

88歳女性 高血圧症で通院中
もともと弁口面積は1cm2と、比較的高度な大動脈弁狭窄症がみられましたが、高齢で室内はシルバーカー歩行、屋外は電動車いすを使用する日常生活動作でしたので、心臓にかかる負荷が少なく、心不全症状をみることはありませんでした。
ところがある日、自宅で転倒してろっ骨骨折を受傷されました。数日は自宅で養生されていたのですが、呼吸困難と下肢の浮腫といった心不全症状が突然出現したため、岐阜ハートセンターへ緊急入院となりました。どうやら、折れたろっ骨が胸膜を傷つけて左胸に血が貯まり“血胸”という状態になったため、これが引き金となって心不全を起こしたようです。
高度な大動脈弁狭窄症は心不全を合併すると、"傷んだ大動脈弁を人工弁に交換する”人工弁置換術の適応となります。
この患者さんは高齢のため歩行障害はありましたが、非常にしっかりしてみえるので手術の成功率は極めて高いと判断され、血胸と心不全症状が改善してから人工大動弁置換術を受けられて、無事に退院されました。

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徐脈頻脈症候群(じょみゃくひんみゃくしょうこうぐん)

72歳女性  高血圧症
金曜日に、動悸発作で患者さんが来院されました。
発作性心房細動という不整脈で、脈が140くらいあります。
これは不整脈を止めないと動悸が治まらないので、岐阜ハートセンターへ紹介しました。
その患者さんが、翌土曜日に「さっきから動悸が再び出てきたのと、それに混じって、時々頭がフラーっとして気持ちが悪い。」と連絡がありました。
私の頭に病気が一つ浮かんだので、早速岐阜ハートセンターに連絡して、再診していただくようにお願いしました。
私も岐阜ハートセンターへ行き、患者さんの心電図をみて、私の予想が当たっていることを確認しました。
心電図で脈は30と非常に遅くなっていたのです。
前日の頻脈と今回の徐脈で考えられる疾患は、徐脈頻脈症候群です。
これは心臓の中にある洞結節という発電所の機能が異常をきたして、脈が必要以上に早くなったり、遅くなったりする病気です。
極端な徐脈により脳血流が維持できなくなって意識障害を来たすことをアダムス・ストークス発作と言います。
まさにこの患者さんが訴えたフラツキはアダムス・ストークス発作だったわけです。
治療は、障害された洞結節の変わりに人工ペースメーカを植え込まなければなりません。
この患者さんも後日、人工ペースメーカを入れていただきました。

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労作性狭心症(ろうさせいきょうしんしょう)と
冠攣縮性狭心症(かんれんしゅくせいきょうしんしょう)の合併例

70歳男性
高血圧症、脂質異常症、高尿酸血症、慢性腎臓病で通院中。
11月初旬から朝・晩の犬の散歩中に、数十秒間続く胸部圧迫感が出るようになったとのことです。
発作は散歩の時だけで、それ以外の日常生活では起こらないそうです。
発作持続時間が、通常の労作性狭心症の数分から15分なのに比して本症例では短く、散歩以外の労作では発作が誘発されない点が非典型例ではありますが、労作性狭心症を疑い岐阜ハートセンターへ精査目的で紹介しました。
冠動脈造影検査では左冠動脈の中枢部に90%の狭窄がみられたのと同時に、冠動脈攣縮誘発試験が陽性でした。
すなわち、労作性狭心症と冠攣縮性狭心症の合併であったため、症状が非典型的になったようです。
この患者さんの場合、動脈硬化による腎機能低下がみられたため、カテーテル手術では術中および術後に腎臓に有害である造影剤を使用しなければならないので、これを断念して冠動脈バイパス手術が施行されました。
最近、高血圧症、糖尿病、脂質異常症に伴う慢性腎臓病の患者さんが増えています。
腎機能が低下した患者さんに多量の造影剤を投与すると、腎機能が急速に悪化することが知られており、今回の患者さんのように、通常ではカテーテル手術を選択される病変でも手術を選択せざるを得ないケースがあります。

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労作性狭心症(ろうさせいきょうしんしょう)

65歳女性  糖尿病、高脂血症
上記にて通院中。
最近自転車で通勤するときに、いつも信号のところまで来ると胸が締めつけられる感じがして、数分間休んでいるとおさまってくるとのことです。
これは労作性狭心症といいます。
一般的に狭心症と言われているものは、この労作性狭心症のことを指します。
心臓は全身へ血液を送り出していますが、心臓が働くためにも血液が必要です。
この血液が通る血管を冠動脈といいます。
この血管が動脈硬化によって狭い場所ができると、運動などの労作を行った時に十分心臓に血液が行き渡らず、部分的に酸欠状態となる場所ができると、胸痛や胸部絞扼感(きょうぶこうやくかん)のような胸部症状が出てきます。
労作性狭心症の特徴は、この患者さんのように、ある一定レベルの労作をすると必ず発作を起こすことです。
このようなタイプは安定型労作性狭心症といいます。
よく患者さんが「むかし狭心症と言われたが、今は治ってしまった」と言われますが、冠動脈の動脈硬化は自然に消えてしまうことはないので、基本的にはむかし狭心症だったということは成り立ちません。
この患者さんは岐阜市民病院で心臓カテーテル検査をしていただき、冠動脈の左前下行枝に90%の狭窄がみられたため、風船で狭窄部を拡張したあとステントという金属の輪を留置する治療を受けられ、その後は症状がみられなくなりました。

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頚動脈狭窄症(けいどうみゃくきょうさくしょう)

80歳  女性
糖尿病、高血圧症で通院中
頸動脈エコーを行ったところ、右総頚動脈の高度狭窄を認めました。
同部位の血流速度を測ったところ、350cm/秒でした。
通常の血流速度は100cm/秒ですから、3.5倍になります。血流速度が200を超えると頚動脈は80%狭窄があると言われています。
この患者さんは松波総合病院の脳神経外科へ紹介し、狭窄部にステントを留置する拡張術を行っていただきました。
動脈硬化は血管の壁の内側に脂肪が層状に蓄積していくことによって起こります。
脂肪の蓄積したものをプラークと言って、新しいプラークは柔らかくもろいので傷つきやすく、傷がつくとめくれ上がってその部位に血栓を形成してしまいます。
この柔らかくもろい不安定なプラークを安定した状態に保つために、アンギオテンシン変換酵素阻害薬、アンギオテンシンII阻害薬といわれる降圧薬や、スタチン、EPAといった脂質異常症の薬が使われます。
糖尿病の方は、血糖コントロールが重要なのは言うまでもありません。
糖尿病の方は特に頚動脈エコーを一度受けられることをお勧めします。

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冠攣縮性狭心症(かんれんしゅくせいきょうしんしょう)

54歳  女性
朝の6時ころから胸がしめつけられるように数分間痛くなり、この発作が断続的に30分ほど続いたとのことで来院されました。
これは冠攣縮性狭心症を疑う症状です。
冠攣縮性狭心症は、心臓を栄養する血管「冠動脈」が痙攣をおこして内腔が狭くなるために狭心症症状を呈する疾患です。
冠動脈の内腔が動脈硬化によって狭くなり、労作時に胸痛発作を起こす「労作性狭心症」とは型が異なるので「異型狭心症」ともいわれます。
診断は冠動脈造影検査にて有意狭窄が無いことを確認した後に、冠攣縮を誘発するアセチルコリンやエルゴノビンを投与し、これに反応して冠攣縮発作が誘発されれば確定診断となります。
この患者さんも岐阜ハートセンターでエルゴノビン負荷試験を施行していただき、左冠動脈完全閉塞、右冠動脈75%狭窄を認めました。
喫煙とアルコールの多飲は発作を誘発しやすくするため、禁煙と節酒が必要です。
治療はジルチアゼム(ヘルベッサー®)やニトログリセリンのテープ剤を投与します。
この患者さんもヘルベッサー®の内服とニトログリセリンテープの併用で、発作は消失しています。

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末梢動脈疾患(peripheral arterial disease PAD)

65歳男性  糖尿病、喫煙、高血圧症、脂質異常症
以前から糖尿病、高血圧症、脂質異常症で当院へ通院されている患者さんです。
「以前から、しばらく歩行をすると左のふくらはぎが痛くなっていたが、最近は200mくらい歩くと、ふくらはぎが痛くて休憩しなくてはならなくなった」
「ここに来るのに3回くらい休憩して来た」とのことです。
診察すると、左膝窩動脈(膝の後ろの動脈)、両側足背動脈(足の甲の動脈)、両側後脛骨動脈(くるぶしの下の動脈)が触知不良でした。
精査目的で岐阜ハートセンターへ紹介させていただきました。
下肢動脈造影では太ももにある、左浅大腿動脈が完全閉塞、右浅大腿動脈の高度狭窄がみられました。
左右浅大腿動脈にステント挿入術をしていただき、閉塞は解除され、歩行時の疼痛は起こらなくなりました。
PADには閉塞性動脈硬化症(ASO arteriosclerosis obliterans)と閉塞性血栓血管炎(TAO thromboangiitis obliterans)の2疾患がありますが、TAOは現在少なくなったため、ほぼASOのことを指します。
名前が示す通り、動脈硬化により末梢の動脈が閉塞してしまう疾患で、70歳以上の15~20%が罹患しているといわれます。
PAD患者さんの5年生存率は70%で、下肢切断例では40%と非常に低くなります。これは大腸癌よりも悪いのです。それは、PADは脳卒中や虚血性心疾患を高率に合併するからです。
この患者さんも冠動脈造影をしていただきましたが、幸い冠動脈に狭窄はみられませんでした。
予防するには、糖尿病、高血圧症、脂質異常症の管理をしっかり行うことと、禁煙をすることが必要なのは言うまでもありません。

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発作性心房細動

76歳男性  高血圧症
定期の再診で来院されました。
ご本人は無自覚ですが、脈が乱れて速いことに気づき、心電図を記録したところ、心房細動という不整脈でした。
心房細動は、心房が痙攣してしまっている状態で、一番の問題は痙攣している心房の中で血栓が出来やすくなることです。
この血栓が脳へ飛ぶと、心源性脳梗塞という重篤な病気を引き起こします。
従って、心房細動治療の第一はこの血栓形成を予防することです。
心不全、高血圧症、75歳以上、糖尿病が各1点、脳梗塞の既往があると2点として、あてはまるものの合計が2点以上になると、抗凝固療法を行う適応となります。
この患者さんは、高血圧症、76歳の2つで2点となるので、ワルファリンという抗凝固薬の投与を開始しました。
最近、ダビガトラン、リバーロキサバンという新しい抗凝固薬が発売され、この他にも発売予定の薬がありますが、患者さんの状態によってどの薬を使うかを選択することになります。

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完全房室ブロック

80歳  男性
高血圧症のため、以前から降圧薬を服用されている患者さんです。
「3日前から頭がフラフラする」とのことで再診されました。
まぶたが両方ともむくんでいて、血圧を測定すると、140/40mmHgでしたが、心臓の聴診をすると、心拍数が36拍/分と極端に少なく、ときどき「ドカーン、ドカーン」と音がします。
心電図を記録すると、完全房室ブロックという状態でした。
人間の体は電気で動いています。電気は人が創り出したものではなく、自然に存在するもので、人間の筋肉も脳も心臓も電気で動いています。心臓の中には発電所があり、それを流すための電線や中継所が存在します。
完全房室ブロックは、心房と心室の間で電線が切れてしまった状態です。
他の病気に伴って起こることや、薬の副作用で起こることもありますが、原因不明が多いです。
切れてしまった電線の端が一時的に発電所の代わりをするのですが、質が悪いので心拍数は30台と正常の半分程度に低下するため、低拍出性心不全となり、めまいやむくみが出ます。
また、電線が切れているので心房と心室の収縮するタイミングが合わなくなり、ときどき「ドカーン」という大砲音が聴かれます。
このままではいつ心臓が止まってしまうか分らないので、この疾患は植え込み型ペースメーカーの絶対適応となります。
この患者さんも岐阜ハートセンターでペースメーカーを心臓に入れていただき、現在は元気ですごされています。
心電図検査が必要な患者さんの0.5%くらいの頻度なので、多い病気ではありませんが、脈がすごく遅い場合にはすぐに受診してください。

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無症候性心筋虚血

72歳男性  糖尿病、高血圧症、喫煙
糖尿病、高血圧症にて通院中の患者さんです。
定期の外来再診をされたときに、ご本人は自覚しない不整脈を聴診しました。
すぐに心電図を記録すると、心室期外収縮という不整脈を認めました。
数年前から当院へ通院されてみえますが、今まで一度も不整脈を認めたことが無かったため、すぐに岐阜ハートセンターへ冠動脈CTを依頼しました。
結果は左冠動脈の前下行枝と回旋枝の2本に狭窄を認めました。
その後すぐに冠動脈カテーテル治療をしていただき、狭窄は改善して無事に退院されて、現在も元気にされています。
 
このように狭心症を発症しているにもかかわらずに、症状がないものを無症候性心筋虚血といいます。
これは糖尿病の患者さんに多く、糖尿病により神経が障害されるために胸痛症状が出ません。
糖尿病では狭心症や心筋梗塞といった虚血性心疾患を合併しやすく、このうえ加齢、高血圧症、喫煙が揃うこの患者さんではとりわけ発症のリスクが高いため、たとえ胸痛の症状が無くても、今まで無かったような変化(今回は不整脈でした)を認めた場合は、積極的に精密検査をする必要があります。

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特発性拡張型心筋症

53歳  男性
高血圧のため受診されました。血圧は160/90mmHgのため、降圧薬を投与し、状態を把握するため、いつものように順番に検査をしていくことにしました。
胸部レントゲン写真では心臓肥大はみられませんでしたが、心電図では心臓肥大の所見があったので、心エコー図検査を行ったところ、左心室径が70mmを超えていました。(正常は50mm程度です) 左心室は全身に血液を送り出す最も重要な部屋で、正常では70%程度収縮しますが、この患者さんでは40%に低下していました。
この時点で特発性拡張型心筋症(DCM)を疑い、診断を確定するには心臓の筋肉をほんの僅かカテーテルを用いて採取する「心筋生検」を行わなければならないので、岐阜市民病院へ依頼しました。結果は予想通りのDCMでした。
DCMによる慢性心不全の治療としては「β遮断薬療法」といって、心臓を少し休ませる治療をしますが、この治療により、この患者さんの左心室径は65mm、収縮は50%に改善し、現在もこの状態が維持されています。
DCMは心臓の機能が著しく低下すると、息切れ・むくみ・夜間の呼吸困難などの症状で見つかることが多いのですが、この患者さんは全く無症状で、レントゲン写真も心臓肥大がみられず、心エコー図検査で初めて分った症例ですが、初診時には「どんな病気が潜んでいるか分らない」ということを肝に銘じて診療にあたらなければならないことを、あらためて教えていただいた患者さんです。

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不安定狭心症

53歳男性  肥満、喫煙
2週間前から日中の軽作業中に数分続く、胸部が締め付けられる感じがほぼ毎日あり、受診当日は朝の起床時に初めて発作が出て、今までで一番強かったとのことで来院されました。
来院時はすでに胸部の症状は治まっており、血圧は130/100mmHgで脈は75回/分、心電図に異常はありませんでした。これは狭心症のなかでも不安定狭心症という状態です。
不安定狭心症の定義は、
①初めて狭心症の発作を起こした。
②発作の程度が増した。
③初めて安静時に発作を起こした。
のいずれかに該当するもので、極めて心筋梗塞に移行しやすい状態にあります。
この患者さんは①~③すべてに該当しています。 直ちに岐阜ハートセンターへ紹介し、冠動脈造影をしていただいたところ、左冠動脈前下行枝という重要な血管がほとんど詰まりかけていました。引き続きカテーテル手術をしていただき難を逃れ、無事退院されました。
この患者さんは今まで健診を受けたことが無かったとのことで、現在は血圧の管理、減量、禁煙の指導を行っています。
自分は健康だからと過信しないで、健診を受けていただきたいのと、今まで無かったような胸部症状が出たら、できるだけ早く受診されることをお勧めします。

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